暮らす

土谷さん

「誰に言われたわけでもないけど、自分で毎日風呂を巡るっち決めたけん、多分死ぬまで風呂巡りを続けるんやろうな」土谷さんはそう言って、小学生のころと同じように自転車で温泉へと向かって行った。

温泉やけど、風呂なんよ 

別府を離れ、温泉に入れない日が続くと、帰りたくて仕方なくなるという土谷雄一さん。障がい者の自立支援団体「CIL ゆぴあ」で車椅子で生活する人たちの温泉入浴介助などを行いながら自らも湯巡りを楽しんでいる。

土谷雄一さん(後)と安冨秀和さん(前)

四国のお遍路のように別府の温泉を巡る「別府八湯温泉道」。指定温泉約150か所に入浴し、オリジナルパスポート「スパポート」にスタンプを押すスタンプラリーだ。
88湯を制覇すると「温泉名人」と呼ばれる。土谷さんは88湯を33回巡り、「永世名誉名人」という称号を手にしたばかり。幼いころから温泉好きで、小学校の夏休みには、1人自転車に乗って当時住んでいた隣の市から別府の温泉に入るため通っていたそうだ。現在は別府に住んでいる土谷さん。色々な温泉に毎日通っていたし、スタンプがあるのならと、「別府八湯温泉道」を始めた。2巡、3巡と続けるうち、同じ温泉でも時間や天候、季節によって色や香りが異なることに気付き、「湯は生まれている」と感じたという。

温泉のそばに汲み湯があることが多い

温泉へ向かう土谷さんと一緒にまちを歩くと「あの家は湯気抜きの窓の跡がある」、「あそこに汲み湯があるやろ、洗い物とか洗濯とか、家事にも温泉が使えるっち、ありがたいことでなぁ」と、普段は気付かない温泉の気配を次々と教えてくれる。
「庶民の暮らしの中で受け継がれてきたんよ。自然が誰にも等しく与えてくれる。別府は恵まれちょん」。自然の恵みである温泉を存分に感じ、感謝する。そんな土谷さんの姿勢に共感し、一緒に温泉を楽しむ仲間が次第に増えていった。
日本全国の温泉好きが、別府を訪れては土谷さんと裸の付き合いをする。そんな中で「CILゆぴあ」のパートナー、安冨さんと出会ったという。地球の恵みは誰もが享受できるものだと、安冨さんや多くの仲間たちと共に入浴介助を始めた。あちらこちらで湧き出す温泉を多くの人と分かち合う。そんな時間を過ごすのが幸せなのだそうだ。

閉めてしまった温泉からもらったという温泉コレクション

閉めてしまった温泉からもらったという温泉コレクション

巡りきれない程たくさんの温泉があり、ついハシゴ湯してしまいたくなるが、最近は、1日1つの温泉をゆっくり味わうことが多いと土谷さん。「他の地域の人からすれば贅沢なことやけど、1つの温泉を十二分に満喫した方が良いし、そもそも風呂は1日1回入るのが普通やろ?」
温泉のことを風呂と呼ぶ土谷さんは「別府の人は温泉=自分んちの風呂っち感覚の人が多いんやねぇかな。10年間、雨でも雪でも風呂巡りに行きよったしな。誰に言われたわけでもないけど、自分で毎日風呂を巡るっち決めたけん、多分死ぬまで風呂巡りを続けるんやろうな」
そう言って、小学生のころと同じように自転車で温泉へと向かって行った。

スパポート(100円)は別府駅構内観光案内所を始め、「CIL ゆぴあ」でも購入できる

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